個人間のお金の貸し借りは

消滅時効の進行を止めるにはどのような手続きをとったらよいのか

親友にお金を貸したが、なかなか返してくれない。もうすぐ、お金を貸してから10年になる。個人間の
お金の貸し借りは10年で時効になると聞いたが、10年経ったあとでも貸したお金を返してもらう方法
はないのだろうか?

 

●時効の進行は止めることができる
個人間のお金の貸し借りは、貸してから10年経つと借主から消滅時効を主張される可能性があり
ます。しかし、この消滅時効の進行は、止めることができるのです。では、どのようにしたら止めること
ができるのでしょうか。民法では消滅時効の進行を止めるための手続きとして、大きく分けて「請求」
「差押え、仮差押えまたは仮処分」「承認」の3つを定めています。そして、これらの手続きのいずれ
かひとつをとり、消滅時効の進行を止めることができれば、その手続きが終了した時点から、ふたたび
消滅時効の期間が1から進行することになります。つまり、消滅時効の進行を止める手続きのいずれ
かを定期的にとっていけば、いつまで経っても、借主から消滅時効を主張されることはないのです。
したがって事例のような場合でも、消滅時効の進行を止める手続きのいずれかをとれば、お金を貸
してから10年経ったあとでも取り戻すことができます。では、時効の進行を止めることができる3つの
手続きを具体的に見ていくことにしましょう。

 

●時効の進行を止めることができる手続き@「請求」
まず最初に「請求」です。これは裁判上における請求のこと(訴訟や支払督促を申し立てること)を
いいます。したがって、口頭や文書での請求は、消滅時効の進行を止める効力のある「請求」には
あたりません。貸主が借主に対し「請求」をし、裁判所でそれが認められた場合は、その手続きが
終了した時点から消滅時効の期問がふたたび1から進行することになります。ただし、申し立てたあとに
「請求」を取り下げたりした場合には時効の進行は止まりません。また、1年や2年で時効が来てしまう
債権について、貸主による「請求」が認められると、その債権の消滅時効の期間は一般的な債権と
同じ10年に延長されます。つまり、1度「請求」をすれば、それ以後は1年や2年おきに消滅時効の
進行を止める必要はないのです。ところで先ほど、口頭や文書での請求は、消滅時効の進行を
止める効力のある「請求」にはあたらないといいましたが、普段、貸主が行なう口頭での請求や、
請求書などの文書による請求は、消滅時効の中断にまったく影響を与えないのでしょうか。いいえ、
そんなことはありません。このような請求は、民法では「催告」と呼ばれており、これをしてから6か月
以内であれば、たとえ時効期間を経過していたとしても、「請求」をして消滅時効を中断させること
ができます。なので、まったく影響を与えないというわけではありません。しかし、この「催告」は、6か月
以内に「請求」をして、はじめて意味をなすものです。請求書を借主に定期的に送付していたからと
いって、それだけで消滅時効が中断するものではありません。また「催告」をいつしたかの証明は貸主

がしなければなりません。借主から「聞いていない」「受け取っていない」といわれないためにも、配達
証明付内容証明郵便で行なうことをおすすめします。

 

●時効の進行を止めることができる手続きA差押え、仮差押えまたは仮処分
次に「差押え、仮差押えまたは仮処分」です。これは、借主の給料や預金や不動産に対して、差押
えや仮差押えなどをした場合が該当します。この場合、基本的に、この手続きを裁判所に申し立て
たときに消滅時効の進行を止める効力が生じ、手続きが終了したときから、また消滅時効が進行
すると考えてよいでしょう。ただし、申し立てたあとに取り下げなどをした場合は、消滅時効を止める
効果は生じませんので、注意してください。これは、先に説明した「請求」でも同様です。

 

●時効の進行を止めることができる手続きB承認
最後に「承認」についてです。これは、借主が貸主に対して「自分はあなたに借金がある」と認める
行為のことをいいます。この手続きは、先の「請求」とは異なり、裁判上で行なう必要はありません。
借主が裁判外で借入金があることを口頭や書面で認めたり、貸主に弁済をしたりした(これは借入
金があることを認める行為にあたります)場合は、消滅時効の進行が止まります。先ほど、借主に
対して口頭で請求したり請求書などの文書を送っても「催告」にしかならず、この行為のみでは
消滅時効の進行を止めることはできないといいましたが、この行為によって借主が口頭や書面で
借金があることを認めたり弁済をした場合は「承認」したことになり、この借主の行為によって消滅
時効の進行が止まることになります。「承認」は、消滅時効の進行を止める手続きのなかでいちばん
使いやすい手続きかもしれません。この手続きを使う場合、のちのトラブルを防ぐには、銀行振込による
弁済や借主の印鑑証明書付で債務承認書をもらうなど、後日、誰が見ても借主が「承認」の行為
をしたことがわかる、すなわち、仮に訴訟になっても立証することができるかたちで「承認」をしてもらった
ほうがよいでしょう。なお、借主に「承認」をしてもらうにあたり、貸主は借主に対して消滅時効の期間
などについて積極的に伝える必要はありません。したがって、すでに消滅時効の期間が過ぎてしまって
いる場合であっても、借主がそのことに気づかず、時効を主張する前に「承認」をしてしまえば、貸主
としては、ふたたび消滅時効の期間が経過するまでは借主から時効を理由に請求を拒絶されること

はありません。ただし、嘘をついてだましたり、あるいは消滅時効の進行が止まったと勘違いさせ
るなどして借主に弁済をさせた場合は、弁済をしたあとであっても、借主からの消滅時効の主張が
認められる可能性があります。