お金の貸し借りにおいて、借主が一定の期間まったく支払わないでいた場合は

何年も前にした借金の請求書がある日突然届いたら

消費者金融の株式会社A社から、10年前に30万円を借りた。最初の1年は返済をしたが、失業したの
で実家に引っ越し、それ以後は請求書も来なかったので支払いをしていなかった。最近になり、結婚す
るため住民票を移動したところ、A社から未払い元金25万円に加えて10年分の利息と損害金あわせて
100万円を一括で支払うよう請求を受けた。もう10年も前の借金だが、A社の請求どおり125万円を
A社の定めた期日までに一括で支払わなければならないのだろうか?

 

●お金の貸し借りには時効がある
お金の貸し借りにおいて、借主が一定の期間まったく支払わないでいた場合は、貸主の持っている「貸し
たお金を返せと請求できる権利」が消滅してしまうことがあります。これを法律では「時効」(正確には消滅
時効)といいます。では、どのくらいの期間が経てば時効となり、貸主の持っている「貸したお金を返せと
請求できる権利」が消滅するのでしょうか。これは、貸主が会社であるか個人であるかによって異なり、
会社であれば5年、個人であれば10年とされています。ただし、貸主が個人であったとしても、借主が
事業者で、その事業のためにお金を借りた場合は5年になることもあります。この5年とか10年といった期間
は、返済期限の合意がある場合はその返済期限が過ぎたときから、返済期限の合意がない場合は契約
を締結したときから開始します。したがって、借りた先が「株式会社○○○」や「○○○有限会社」のような
会社であれば最後に支払いをしてから5年間、「○○商事」や「○○金融」のような個人で消費者金融業
を経営しているところや知人・友人などの一般人であれば最後に支払いをしてから10年間、まったく支払い
をしていなければ、借主は時効を主張することができるようになります。時効を主張できるということは、
貸主からの「貸したお金を返してくれ」という請求を借主は拒絶できるということです。事例では、お金を
借りた先は株式会社A社という会社で、最後に支払いをしてから5年以上が経過していますので、消滅
時効の成立により請求を拒絶することができるといえそうです。

 

●時効の成立を主張しなければいけない
ここで注意しなければならないのは、5年や10年という期間(「時効期間」といったりします)が過ぎさえす
れば、それだけで貸主からの「貸したお金を返せ」という請求を拒絶することができるようになるわけでは
ない、ということです。時効期間が経過したことによって貸主からの請求を拒絶するには、時効期間が
経過したことを貸主に主張しなければならないのです。では、どのように貸主に主張すればよいので
しょうか。法律では、とくに時効の主張方法について定めた規定はありません。極端なことをいえば、
時効期間が経過したことを口頭で貸主に告げてもいいのです。しかし、あとで貸主と争いになった
ときに、口頭で告げていただけでは、貸主から「そんなことは聞いてない」といわれることも考えられます。
ですから、誰が見ても明らかなように、書面、できれば配達証明付内容証明郵便で、時効期間が
経過し「貸したお金を返せ」と請求できる権利が消滅したことを貸主に伝えたほうが安全であると思います。

 

●消滅時効を主張できないこともある
借主は、まったく支払いをせずに5年や10年という消滅時効の期問さえ過ぎてしまえば、どのような場合でも
貸主に消滅時効を主張し、貸主の請求を拒絶することができるのでしょうか。いいえ、そんなことはありま
せん。消滅時効の期間の進行は、止まってしまうことがあるからです。では、どういう場合に消滅時効の
進行は止まってしまうのでしょうか。それには3つのケースがあります。

 

@貸主から裁判所を通じた「請求」(訴訟や支払督促など)がなされ、その「請求」が裁判所に認められて
しまったとき

 

A差押えや仮差押えがなされたとき

 

B借主が借金があることを認めた、または認めたととれるような行動(返済など)をしたとき

 

の3つです。そして、いったん時効の進行が止まってしまうと、また最初から時効の進行が開始します(@に
より進行が止まった場合は、もともとの消滅時効の期間が10年より短いものであっても、進行再開後の
期間は10年となってしまいます)。したがって、消滅時効を貸主に主張しようとするときは、@やAの行為を
されたことがないか、あるいはBをしたことはないか、確認すべきでしょう。

 

●時効が成立していることを知らずに支払いをしてしまったら
時効期間が経過していたにもかかわらず、そのことを知らずに、貸主に支払いをしてしまったら、どうなる
のでしょうか。支払いをしたあとでも、時効期間が経過したことに気づいたら、消滅時効を主張することは
できるのでしょうか。残念ながら、1度でも支払いをしてしまったら、貸主に対して借金があることを借主が
認めたこととなります。これにより消滅時効を主張する権利がなくなってしまい、支払う前であれば主張
できた時効の効力が、主張できなくなってしまいます。これは、たとえ消滅時効の期問が経過していること
を知らずに支払った場合でも同じです。1度でも支払いをしてしまったら、もはや消滅時効の主張はできなく
なってしまうのです。ただし、貸主が借主をだまして支払いをさせているときなどは、支払いをしたあとであっ
ても時効が認められることがあります。